1月 19th, 2023
矯正治療は、子どもや若者のもの!と思っておられませんか?
1/18日の産経新聞に、「中高年の矯正治療」についての記事が掲載されましたので、紹介させていただきます。
そう言えば、当院でもお子さんの矯正治療に続いて、ご両親が始められるケースが増えています。
40代、50代の中高年の呼ばれる年齢は、私は、「第二の矯正適齢期」と紹介しています。
体のあちこちの老化が目立ち始める時期に、咬合の崩れも生じてくるので、その前に治しておくことをお勧めします。
そして、それ以降で崩れかかった場合には、崩れる速度を遅くすることもできます。
昨日も、80代のMさんが、矯正治療終了後の資料採得に来院されていましたが、笑顔が素敵になり、若返って、一層明るく前向きになられたことを、お互い喜び合っていました。
確かに子どものようにはいかない部分もありますので、そこは、検査結果を睨みながら、うーーんと考えます。
他のドクターの意見も聞きながら、時には、一つの症例で1時間2時間と作戦を考えていることもあります。
それが、矯正の奥深さであり、私が大好きな部分です。
ときには、矯正治療によって得られるメリットとそれに必要な負担の大きさとを比較して、ご本人のご意見も伺いながら、「しない」という選択肢を選ぶことになる場合もありますが、納得した上での選択ですし、その後の注意点などもご理解いただけるので、じゅうぶんな価値があることと思っています。
あきらめずに、一度ご相談ください。
2023.1.18付産経新聞朝刊
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12月 16th, 2022
矯正治療って、出っ歯や受け口やガタガタをきれいにするルックスを治す治療と思われていますよね。
美容外科とか、美容皮膚科とか、エステなどの仲間で、それらの歯科バージョンって、思われていますよね。
ほとんどの方がそう思われていると思いますし、それはしかたがないと思っています。
一般歯科医の中にもそう思われている先生も多いような気がしますし、矯正認定医を持っておられる先生の中にも、少なからずおられるような気がします。
並べることだけでなく、皆さんの健康を支えていくために、きちんとした機能そして安定が大切なんです。
レベルの高い一般治療をされている診療所の先生方とご一緒させていただいていた若い頃、とても尊敬しているけれど口の悪い先生から、「矯正のヤツラは、並べることしか考えてへんやろ!」って、言われたことがあります。
その言葉に”カチン”と来た私は、「そうは言わせない。」と、咬合器(顎を楽にした時としっかり噛んだ時の咬み合わせのずれを調べる機器)に模型をマウントして診断する方法や、MFT(口腔筋機能療法:安静時と嚥下(飲み込み)時の舌や口唇の位置や動きが正しくできていないのを、治していくレッスン)などを、取り入れてきました。
口唇や舌の問題ある位置や動きに問題があると、上下の歯がしっかり噛まないため、前歯誘導や犬歯誘導(前歯や犬歯で顎の動きをコントロールする)ができなくなってしまうのです。
補綴の場合には、被せ物の形を調整することで、複雑な咬合を仕上げていくことができますが、矯正治療は、生えている歯をワイヤーで動かして調整していくので、いつも100点満点は難しいのですが、目指しています。
ただ、口唇と舌を味方につけておけば、歯は自然に噛むという性質を持っているので、装置を外した後、何μというオーダーで、自分で正しい位置に移動してくれます。
話が逸れてきましたが、何を言いたいかと申しますと、安易に矯正治療を始めたばかりに、治療結果に不安を感じられた方が、相談に来られることが増えてきているような気がします。
そして、残念ながら、そういう方の再治療はとても難しいのです。
私が矯正医を始めた約40年前よりも、はるかに矯正治療は身近なものになってきて、とてもうれしく思っていますが、正しい矯正治療の知識がみなさんに行き渡っていないがために、問題も増えてきているように思います。
私たち矯正医の業界にも問題があるのです。
厳しい試験に合格した日本矯正歯科学会の臨床指導医(旧矯正専門医:他の矯正の団体の反対に合い統一できていないので、名称を変更せざるをえなかった。)は、約10万人と言われている歯科医の中でも、わずか300人ほどしかおらず、他にもいろいろな難しい現状があり、なかなか矯正歯科の専門医制度がスタートできない現状があります。
その間にも、どんどん矯正治療を開始される人が増えていきます。
日本は、きちんとした制度ができるのが、特に遅いと感じています。
禁煙もそうです。
私は禁煙推進活動もしていますが、日本政府の対応の遅さに辟易していても仕方がないので、正しい知識を子ども達に伝える草の根活動をしています。
矯正治療に関しても、”矯正はエステと同じ”と考えるのではなく、ご自身の正確な情報と正確な判断力で、本物の矯正治療を開始していただきたいと願ってやみません。
長文で申し訳ありません。お付き合いいただき、ありがとうございました。
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11月 28th, 2022
11月27日、母校大阪大学歯学部OG会に出席してきました。
上は、80歳の先輩から、下は、4年生の学生まで、およそ40人が、同窓会館に集まりました。
まず、改修工事の済んだ学部棟と病院見学。
卒業してからは、矯正の医局にたまに顔を出す程度で、診療室内を覗くこともなく、まして、他科の診療室の中には、大学に残っている間もめったに入室することもなかったので、とても興味深く見学できました。
特に、口唇口蓋裂の子どもたちと日々向き合っている女性ドクターが説明してくれる内容は、関心させられることばかりでした。
また、口唇口蓋裂センターの部屋の壁が、クラウドファインディングで、とてもかわいらしく出来上がっていて、少し寄付させていただいた私としては、とてもうれしかったです。
見学の後は、お弁当を食べながらの自己紹介&Q&Aコーナー、みんなのさまざまな思いを聞くことができ、とても有意義な時間でした。
中でも、80歳の先輩は、長く障害者歯科の分野で活躍されていたのですが、60歳から開業準備をしていたところ、障害者歯科センターの存続が危ぶまれる状況になったので、存続させるために奔走することになり、無事センターは継続されたものの、自分の開業計画が流れてしまったそうです。
でも、その後は環境保護のボランティアを始め、その分野で本も出版されて大活躍されているとのことで、本当に誇らしく、勇気をいただきました。
また、今、病院長をしている後輩も出席してくれていて、今の阪大病院をより良きものとをするために、厚労省の方々と交渉を続けている様子などを聞かせてくれ、とてもうれしく思いました。
私もいろんなことにぶつかりながらも、なんとか切り抜けてきた自分の体験を通して、後輩たちを励ましてきました。
日本のジェンダー指数が悪いのは有名です。アメリカでも、「女性にはガラスの天井がある。」と言われています。
でも、私をはじめ、みんな若い頃は差別に悩み、悔し涙を流し、「男に生まれたかった。」って思っていたのが、今は、「女に生まれてよかった。仕事をしていてよかった。」って、思えている自分達がいることに喜びを新たにしました。
そんな先輩たちの話を聞いて、若い人たちは、おおいに励まされたようです。
女性が力をつけていくには、女性同士が助け合って、励まし合って行くことなんだなぁって、つくづく感じました。
若い後輩たちが、のびのびと自分の夢を追いかけて活躍してくれることを、応援していきたいと思った1日でした。



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11月 14th, 2022
11月12日、学校歯科医会学術講演会で講演をさせていただきました。
タイトルは、「学校歯科医知っておきたい口腔機能発達不全症の所見とその対応」です。
「今、子どもたちの口腔機能の発育の悪さが、歯並び、咬み合わせの問題を作り出している。どういうことに気をつけてあげないといけないか。」といった内容のお話をしてきました。
いつも診療所でお伝えしていることですが、
「お口をしっかり閉じる。姿勢を正す。全身の筋力アップを図る。」
ということが、どれだけ大切か? なぜ大切なのか? だからどうしてあげないといけないのか?
というお話しです。
矯正治療を受けなくてもいいはずの子どもたちが、口腔機能の発育不全が原因で、矯正治療を受け ないといけなくなっていると思われる症例が増えていることから、その予防について講演してきました。
講演後の質問でも共感してくださる人がいっぱいで、みんなでしっかり対応していかなければ、、という気持ちが一層強くなりました。

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8月 11th, 2022
1990年4月に石橋で開業したイノウエ矯正歯科ですが、今年2月に現在の場所に新診療所を移転して、半年が経ちました。建物だけでなく、電子カルテシステムや一般歯科が本格的に動き出したこともあり、慣れない毎日をバタバタと過ごして、やっと夏休みに入り、一息ついているところです。
あらためまして、新診療所をご紹介させていただきます。
私の弟、space pro 岡田の設計です。
地元の共栄建設さん、柴田建材さんに施工いただきました。こだわりの強い私の要求をしっかり入れながら、期日内に完成させてくださっことにとても感謝しています。
また、診療室にいらっしゃる患者さんが、そして道行く人が、ちょっと心癒される植栽を、と考えていたところ、これまた地元の荒木造園さんが素敵なお庭で建物を囲んでくださいました。毎朝のちょっとしたお手入れが、私の心の癒しになっています。
1階には、6台の矯正用チェアと2台の一般歯科用チェアがあります。うち3台は個室で、うち1室は乳幼児が安心して入れる様、かわいらしくしています。
今までの診療所は狭くて、パーティションも作れなかったのですが、新診療所はゆったりとしているので、患者さんにも喜んでいただいています。
2階には、大きな待合室とKid’sコーナー、相談室とMFT専用の部屋を作りました。待合室の大きな画面にPPTを写して、虫歯予防やMFT(口唇や舌の位置や動きのレッスン)のオリエンテーションができるようになっています。また、待合室の端には、宿題ができる大きな机も作りました。その上には、治療を終えた患者さんからのメッセージ入りの写真のアルバムをずらっと並べていますので、これから矯正治療を始められる方の励みになると思います。
エレベーター、授乳室もありますので、乳幼児も安心してお連れいただけるようになりました。
院長である私の他、お嫁ちゃんの井上 綾子と娘の井上小百合が矯正治療を、橋本先生が一般歯科を担当し、女性4人でがんばっています。
また、勤務歴20年以上のベテラン衛生士3人を含む合計7人の常勤衛生士と2人の非常勤衛生士が、虫歯や歯周病の予防、口唇や舌のトレーニングを行って、ドクターを支えてくれています。
技工士、受付、助手も含め、そのほとんどが、当院の元患者さんであることが、当院の自慢でもあります。矯正治療経験者が患者様の心に寄り添いながら行うピアサポートで、患者さんとドクターとの架け橋となってくれています。
新しくなったイノウエ矯正&歯科を、これからもよろしくお願いいたします。

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4月 17th, 2022
新しい診療所での毎日は、やるべきことがまだ残っていてたいへんなのですが、そんな中、とても元気をいただける出来事がありました!
現在82歳のHさんが当院の患者さんだったのですが、なんと4人目のお孫さんS君をご紹介くださったのです。
「おばあちゃんに、『大学生になったんだから矯正してらっしゃい』って言われた。」っておっしゃっていました。
付き添いで来られたお母さんは、以前、姉のRちゃんが高校生の頃、矯正治療を終えた時に書いてくださったメッセージと写真をアルバムの中から見つけ出して、「なつかしい!Rに見せよう!」 と言って、写真を撮っておられました。もう、ご結婚されたとか!「先生にきれいにしてもらっといてよかった。」とRちゃんとご主人とのtwo shotも見せてくださいました。
矯正歯科医として至福の瞬間です。ありがとうございます!
弟のSくんもお姉さんの写真に励まされたようでした。ゴールを目指して、いっしょにがんばっていきましょう。
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手前は、最近装置が外れた方が書いてくださったメッセージと写真がいっぱいのHappy Smile Board。
奥の机の上に並んでいるのは、開業してまもない頃からの写真のアルバム。
その上にかかっているのは、許可くださった患者さんの笑顔の写真でできた開業30周年記念のボードです。
新しい診療所の私の宝物コーナーです!

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1月 22nd, 2022
急速拡大装置(上顎を骨ごと広げる装置:かなり邪魔な感じの装置)とリバースヘッドギア(上顎を前方へ引っ張って、受け口を治す装置)を先週装着した小学2年生のS君が、昨日、1週間後のチェックに来られました。
装着時には、ぎゃん泣きして嫌がっていたのですが、”わかって泣いているな。”というのは察知できたので、半強制的に装着したものの、その後ちょっと心配していました。
ところが、昨日のS君は、得意満面 !
装置にも慣れて、受け口も治りかけてきて、笑顔いっぱい!
”リバースヘッドギアも、自分一人でできるようになった”と、自慢げに教えてくれました。
”子どもの力ってすごい!”って、前から思ってはいましたが、改めて感動しました。
”よくがんばったね!S君!”
これからも、いっしょにがんばっていこうね!
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11月 24th, 2021
11月初旬に開催された日本矯正歯科学会という矯正の分野では最も認められている大きな学会のオンライン視聴をしているところです。
そこで、大会長の槙教授が企画されたアライナー矯正(マウスピース型)についてのセッションで、槙先生ご自身が講演されていました。
その中で、大学病院に集まってくる失敗症例を見せてくださりながら、「自分も失敗したことがある。もっと、失敗症例を提示して、失敗から学ぶことをしなければならない。治った症例ばかりを発表するのは良くない。」と、警鐘を鳴らしておわれました。
「コンピュータシミュレーションでは、いとも簡単に歯が動いて、きれいに簡単に治るように見えるが、矯正治療はそんなに簡単なものではない。コンピュータ上でのバーチャルの動きと同様に歯が動くと錯覚しないように気を付ける必要がある。」
「ワイヤー矯正も、アライナー矯正も、大切なのは、ワイヤーやアライナーという道具ではなくて、それを使いこなすドクターであり、治療に入る前の診断と治療計画の立案である。」
と明言されていました。
その通りだと思います。
矯正治療は奥が深いんです。
大学卒業後40年以上も矯正治療だけをやってきた私でさえ、まだまだ奥が深いと感じています。
若い頃参加した講演会で、アレキサンダー先生というアメリカの実績ある先生が、「簡単な症例は、世界中ひとつもない。」と言っておられたことを今思い出して、ひしひしとその重みを感じています。
人生100年時代の食を支え続ける歯並び・咬み合わせなんです。
矯正と言うと、ついつい審美性だけに目が向けられがちですが、健康を支えるとても重要な医療であることを、再認識していただけるとうれしいです。
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6月 6th, 2021
イノウエ矯正歯科では、昨年より乳幼児の保険診療も行っています。
小児口腔機能不全症という病名の下、乳幼児の口腔機能のチェックや、指導を保険で行うことができるようになりました。
今年2月に”お口ぽかん”の有病率30.7%という新潟大学の研究結果が国際誌に掲載されたことが話題になりましたが、これまでの研究結果が保険治療導入へきっかけとなったそうです。
イノウエ矯正歯科が、乳幼児の口腔機能不全に取り組むようになった理由は、乳幼児の口腔機能の発達不全が、その後の形態の発育に悪影響を与え、歯並びを悪くするからです。 😥
言い換えると、発達不全を早期に発見し改善すれば、不正咬合を予防できる可能性があるからです。
当院の矯正治療患者さんの中には、幼い時から口腔機能を診てあげれていれば、この子は矯正治療が必要なかったかもしれないのに、、と思える患者さんが増えているような気がします。
初めは、矯正治療患者さんのお子さんやご兄弟だけだったのですが、最近では、全く初めての方も来てくださるようになりました。
虫歯予防だけでも診察は可能ですし、もしかしたら、お母さんが気づかれていない口腔機能発達不全を発見することができるかもしれませんので、お気軽にご利用いただければと思っています。
無駄な矯正治療を受けなくても良いように、赤ちゃんのときから、お口の機能の発達を診てあげることが大切です。 😀
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4月 24th, 2021
コロナの合間をぬって、久しぶりの講演が終わり早1ヶ月が経ちました。
多い時は毎週のように伊丹空港から出かけていたときもあったのが懐かしい気分です。
最近は、不正咬合にならなくてもいい子が不正咬合になっている確率が高くなっているように感じています。
それも、外科的矯正治療を受けなくてはならなくなるまでなってしまっているケースが増えきているような気がしています。
それが、現在の子どもを取り巻く環境の悪化に関係しているように思えてならないのです。
出来る限りの改善を、大人達が心がけよう。保護者の方に伝えよう。というお話をしてきました。
私の悪い癖で、講演のぎりぎりまで、いろいろと考えたり調べたりするので、終わった時はボロボロ、後回しにした雑用が山積み、、、なんとか正常に戻れたのが今日、という感じなのです。
でも、このおかげで、いろんな新しい発見があったり、謎解きができたりで、うきうきしています。
姿勢のこと、筋肉のこと、口呼吸のこと、スピーチのこと、成長発育のこと、発生のこと、解剖学のこと、いろいろな繋がりがわかると、謎が溶けてきて解決法が見えてくる。(エビデンスとして検証することが難しい領域ではありますが、、、、)
もちろん遺伝もあるのですが、環境因子のところをもっと解決していくことで、不正咬合の予防、矯正治療の成績向上、治療後の安定がはかれると強く思うようになってきました。
歯並びの見栄えだけをきれいにすることが矯正治療ではないことをどんどんお伝えしていきたいと思っています。

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